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【多治見市】多治見市役所本庁舎移転について考える

岐阜県多治見市は、市役所本庁舎を日ノ出町の現在地から音羽町の市駅北庁舎隣接地に移転する方針です。
本庁舎移転の理由を、多治見市は「本庁舎の老朽化や耐震性能の低さ」としています。

多治見市役所本庁舎移転について考える

本庁舎建替えに向けた新本庁舎建設予定地の選定について

多治見市の言い分

多治見市役所本庁舎は、築44年を経過しており建替えが必要となっています。これまで14か所の候補地から駅北庁舎隣接地(駅北17街区)と現本庁舎敷地(日ノ出町)の2か所まで絞込みを行っていましたが、比較検討した結果、駅北庁舎隣接地を選定しました。今後、市議会に提案し、決定していきます。
多治見市HP 2020年2月28日

2020年2月28日時点での選定理由としては、

「駅北庁舎隣接地と現本庁舎敷地(日ノ出町)との比較検討にあたっては、①利便性、②防災拠点、③経済性の3つの側面から評価しました。その結果、3つの側面ともに駅北庁舎隣接地が優位と判断しました。
特に、公共交通機関の路線が集約しており、市の全域からアクセスしやすいこと、比較的に費用が抑えられることが評価されました。」(建設予定地の選定についてのPDFより)

としています。

周辺住民の言い分

市民からは「渋滞する駅周辺の交通事情はどう考えているのか」「移転後の日ノ出町の跡地利用は決まっているのか」といった質問が相次いでいます。
「現市役所の存する川南地区が衰退してしまう」、「銀座商店街等の商店街が一層廃れてしまう」との悲鳴にも似た声も聞こえてきます。
特に市役所周辺は骨董や陶器で少しずつ賑わいを取り戻しつつあるのに、庁舎移転で水を差す結果とならないか、との懸念もあります。

市からは跡地の利活用方法として、いくつかの候補案が提示されています。
緑の芝生広場を整備して、明治初期から昭和初期にかけて建てられた商家や蔵が残る「多治見本町オリベストリート」と連携させて、土岐川南側の交流拠点とする案など。芝生広場には駐車場・駐輪場やコンテナショップを作り、良好な景観とともにオリベストリートや商店街を利用する住民や観光客の休息場所を確保するなどの案が提案されています。

市議会の結論

本庁舎の建替えについては、1.利便性、2.防災拠点、3.経済性の側面から評価し、建設最終候補地として駅北庁舎隣接地を選定、市議会3月定例会に提案したところです。その結果、1.具体的な基本構想を示すこと、2.より多くの市民の皆さんの声を聴くこと、この2点の理由から継続審査となりました。
多治見市HP より

 多治見市の多治見市役所本庁舎移転についてのその後の動き 

令和2年9月14日(月曜日)に、市議会の本庁舎建設に関する特別委員会が開催されましたが、令和2年3月議会に提出した「市役所の位置を定める条例」の一部改正案(継続審査中)について、結論を出さないまま終了しました。これを受け、市長は14日、「市長コメント」を発表しました。また、16日には、市議会に向けて要望書を提出しました。
多治見市HPより

市長コメント
「庁舎の将来構想については、平成22(2010)年から議会との協議を継続してきた。
また、本年3月の議案提案に先立ち、昨年度の9月議会には議会において全議員参加の特別委員会が設置され、議論を進めていくため、基本構想案の提示など議会の要望については誠意をもって対応してきたところ。
賛否を示すことなく議論を終結されたことは、誠に遺憾である。」


【古川市長が本庁舎建て替えについて説明します】(90秒版)

多治見市の古川雅典市長は9月29日、新型コロナウイルス感染症の影響で市税などの大幅な減収が想定されるとして、2021年度に予定していた新本庁舎建設事業などの大型施設整備三事業を、2021年度は予算計上せず先送りすると発表しました。

多治見市役所本庁舎移転について考える

確かに、本庁舎の老朽化や耐震性能の低さを考えれば、本庁舎の建て替えはやむなしという判断に至ります。
駅北に庁舎が移転すれば、多くの市民が居住する川北からの移動は容易になると考えられます。①利便性では間違いなく、駅北に移転すれば高まる、といえます。他方で、市役所周辺や商店街が廃れてしまう、という点は感情論も入っており、100%肯定するというわけにもいきません。

ところが、②防災拠点という観点からすれば、他の庁舎とは分散していることが重要です。北庁舎に隣接する場所への移転は「分散」とは真逆です。
主要河川である土岐川から一定程度離れているという点では五分五分のようにも思います。
駅周辺は、交通量も多く、果たして防災拠点となりうるかも疑問です。

多治見市は③経済性の点からも駅北へ移転すべき、としていますが、本当でしょうか?
一般的に建て替えは隣接する駐車場に建て替え、旧建物を取り壊すのが主流です。
そうでない場合は、庁舎の荷物を引っ越す必要が生じます。
また駅北の庁舎建設予定地は、多治見市の所有でまかないきれるものでしょうか?
仮に賃貸するとなると、「駅チカ物件」に当たるため、高額の賃料を支払う必要が生じ、経済性に反することになります。
駅に隣接場所に立っている市役所庁舎は、他市町村でも、そうないように思います。

そもそも市役所の営業時間は平日8時半から17時頃のため、駅近くに建設する必要性はないように感じます、

以上からすれば、そもそも多治見市役所本庁舎移転候補地を2箇所に絞った時点でおかしく、駅北への移転は防災拠点・経済性の点で不合理であり、ふさわしくない、といえます。